歴代内閣の嫌われ方

 日経世論調査では、1987年9月から定期的に内閣支持率を調査しており、内閣を「支持しない」と回答した者には、その理由も尋ねている。
 https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/cabinet-approval-rating/


 不支持理由の選択肢には、時期によって多少の異同はあるが、「○○党中心の内閣だから」、「政策が悪い」、「国際感覚がない」、「指導力がない」、「安定感がない」、「人柄が信頼できない」、「清潔でない」、「政府や党の運営の仕方が悪い」などの項目が挙げられている。


 このデータによって、歴代内閣の“不人気の理由”を見てみると、思いのほか特徴がはっきり読み取れて興味深い。
 各内閣について、それぞれ最後の5回の調査を見ていくと、小渕内閣以降では概ね以下のようになる。
 ※()は当該理由を選んだ方の割合が最大であった時の割合


 安倍: 人柄が信頼できない(50%)
 野田: 政府や党の運営の仕方が悪い(57%)
 菅: 指導力がない(73%)
 鳩山: 指導力がない(66%)
 麻生: 指導力がない(62%)
 福田: 指導力がない(62%)
 小泉: 政策が悪い(46%)
 森: 指導力がない(64%)
 小渕: 指導力がない(54%)


 小泉内閣は、一貫して「政策が悪い」という理由によって支持されていない。何しろ行政の長なのだから政策がよくないとされるのは致命的なことではある。が、逆に、それだけ政策が論議され、注目されていた時期だったと考えることもできる。


 小泉内閣を除く、小渕内閣菅内閣の6内閣では、「指導力がない」ことが不支持の理由となっており、最もポピュラーな嫌われ方と言える。ただし、2番目の不支持理由まで見ると、森内閣は「人柄が信頼できない」、麻生内閣は「安定感がない」、菅内閣は「政府や党の運営の仕方が悪い」という理由が挙がっており、それぞれの個性を感じられる。
 ちなみに、管内閣では、東日本大震災直後の2011年4月・5月の調査で、「指導力がない」という不支持理由が70%を超えている。当時、いかに“指導力”が希求されたかを、これまた逆説的に示すものと思われる。


 このような中にあって、安倍内閣の嫌われ方は少し独特である。
 「指導力がない」「政策が悪い」といった“穏当な”理由ではなく、「人柄が信頼できない」が不支持理由の大半を占めている。政策的な良し悪しや、リーダーとしての資質ではなく、それ以上に、“人柄”という感情的な理由が選ばれているのだ。
 政治的リーダーの本質に人柄は関係ないという見方もあるだろう。政敵に嫌われる程度にふてぶてしい方が、味方には一層好まれるということもあるかも知れない。その意味では、「政策が悪い」と言われるより、「人柄が信頼できない」と言われる方が、まだマシかも知れない。
 とは言え,過去20年、このように“人間的に嫌われる”内閣はなかったという数的事実は、結構インパクトのあることである。