田中君

 池辺さんの紹介で、田中君の家へ遊びに行く。
 彼は、近々自宅にアトリエを構えるそうで、それを祝って皆で鍋を食した。豆乳のスープに、九条葱と、持ち寄った豆腐を入れる。途中から田中家の皆さんが加わる。


 田中君は、ごく幼い頃から二十年以上に渡り、同じ夢を見続けているという。
 曰く、「玄関の木戸をくぐり、路地を奥へと進むと、建物から力士が出てくる。十両が二人。視点が力士の指先にズームインし、彼らがシャーペンの芯をつまんでいるのが確認される。その芯がポキッと折られるところで、目が覚めたり、深い眠りに落ちたりする。云々」。
 彼はそのほかにも幾つかのスピリチュアルな話を繰り広げ、我々は夜遅くまで興味深くそれを聞いた。