現代アートビジネス

 小山登美夫『現代アートビジネス』読了。


 アンディ・ウォーホルの作品に八十億円もの高値が付くのはなぜか?世界の富が現代アートに集まる今、「作品の価値」に基づいた健全なマーケットこそが、芸術文化の底力となる―。種も仕掛けもあるアートビジネスの世界を、奈良美智村上隆を世に出したギャラリストがすべて教えます。


 小山登美夫は、現代美術を扱うギャラリスト東京藝術大学芸術学科卒業。西村画廊、白石コンテンポラリーアート勤務の後、一九九六年、食糧ビルの一室を借りて独立。当初から、世界のマーケットを見据えて活動を展開しており、日本を代表するギャラリストの一人と言えよう。


 本書は、アートマーケットについての基礎的な知識を、ギャラリストの視点から、浅く広く提供する。ギャラリーの仕事、コレクターやアートフェアのこと、作品値段設定の概要などなど。一つのスタンダードとして考えられるだろう。


 終章では、メディア、経済界、政治家へ、簡潔な提言がなされる。
 一、公平で信頼できる批評がなければ、作品の価値は担保されない。
 一、アートは(文化であると同時に)産業である。
   大きな経済波及効果を持ち、また観光資源にもなり得る。
 一、アートは国の資源である。
 これらは、些か素朴に過ぎると思われるし、もちろんギャラリストとしての偏差が含まれているであろうとも思う。が、関係諸学の議論の始まりに置くことはできる。


 本書は二〇〇八年四月の発行。その時点で、著者は、国内マーケットの確立を目指していく、としている。本書以降の一連の動向(同年秋に世界金融危機が発生、十一月に京都に支店をオープン等々)を踏まえ、現在、彼がどのように考えているのか、少し聞いてみたい気はする。


現代アートビジネス (アスキー新書 61)

現代アートビジネス (アスキー新書 61)