トクヴィル

 富永茂樹『トクヴィル−現代へのまなざし』読了。


 『アメリカのデモクラシー』、『アンシァン・レジームとフランス革命』で知られるフランスの思想家トクヴィル。デモクラシーのもとで生じる政治と社会の本質的な変容を深く観察した彼は、人間の未来をどう考えていたのか。生涯いだいていた彼の憂鬱な感情を手がかりにして、トクヴィルの思想を読み解いていく。


 著者は、桑原武夫河野健二の弟子で、京都大学人文科学研究所の教授。専門は知識社会学
 このように経歴を書くと、研究一本槍の学者のように見えるが、僕にとっては、京都芸術センターの館長としての顔の方が馴染み深い。
 遡れば、氏は、館長職に就かれる前から長く京都市文化政策に関わってこられている。同センターの創設を俎上に乗せた「京都市芸術文化振興計画」や「京都文化芸術都市創生条例」をはじめ、様々な構想、計画等の起草を手がけておられる。


 会議や酒席でお話を伺う機会があるが、柔らかく辛抱強い語り口の中、鋭い主張をなさる。
 氏は、挨拶などで、しばしば、私は芸術の専門家というわけではない、と話される。確かにそううなのであろうが、しかしそのような、氏の、しなやかで強靭な思考の型が、専門ということを超えて、京都の文化芸術にうまくマッチするのであろうと思う。


トクヴィル 現代へのまなざし (岩波新書)

トクヴィル 現代へのまなざし (岩波新書)