ミイラにダンスを踊らせて

 トマス・ホーヴィング『ミイラにダンスを踊らせて』読了。


 1967年、第七代館長に就任するや、「メットの経営もGMの経営も同じだ」と喝破し、寄付寄贈の取り付け、名品の購入、魅力的な展覧会の連発、キュレーターの新人事と過激な改革の道を走り続けた名物館長。派手好きで陽気な彼がいま明かす、楽しくも熾烈な戦いの日々。興味つきない回想録。


 目が白黒する思いである。
 著者は、極めて明け透けに周囲の人を評し、成功も失敗も活写する。欲や哀しみのことを隠そうとしない。メトロポリタン美術館を取り巻く状況が、渦巻く奔流のように感じ取れる。


 メットは、暴力的なまでに美術品を収集する。建物の拡張計画も、文章を読んでいる限りでは、ほとんど際限がないように感じられる。それを可能にする巨額の資金に、ほとんど呆然となる。
 もう四十年も前のエピソードなので、現状がこの通りかどうかは分からない。が、いずれにせよ、日本の美術界のどこを切っても、このバイタリティーに敵うような気は全くしないのである…。


ミイラにダンスを踊らせて―メトロポリタン美術館の内幕

ミイラにダンスを踊らせて―メトロポリタン美術館の内幕