おもしろければOKか?
三浦基『おもしろければOKか?−現代演劇考』読了。
「演劇の衰退を再生、更新するための作戦、まるごと大公開。」とのこと。
著者自身の実際の演出をもとに、演劇を取り巻く諸要素(台詞、発語、俳優、役、言葉、身体…)について検討する。
著者は、演出家、劇団地点の代表。
京都市芸術文化特別奨励制度で奨励者に選ばれているほか、京都芸術センターの十周年記念「式典」の演出を手がけるなど、京都市との縁が深い。
地点の演劇を観る方は、すぐにその特異な発語法に気づかれるだろう。それがどのようにして導き出されているか、演出家がどのように“稽古”に臨み、そして彼の方法論ががどのように演劇史に接続されているか、本書はつぶさに明らかにする。
三浦は“演劇”というものに極めて自覚的である。その自己言及的な姿勢は、演出家が、演出家であると同時に、第一の観客であることに端を発するように思う。彼は同時に二つの視点から、劇を眺めている。
著者のこのような姿勢は、そのまま彼の言葉、文章にも影響を及ぼしている。(書き手は、常に、第一の読み手である。)これから嘘を書く、と書きながら、三浦は論を進める。その様子は、ちょうど彼がベケットの戯曲を評して「思考そのものが、鮮やかに残っている」と言う、そのあり方そのもののように思える。
劇団地点は京都芸術センターから世に出た、代表的な劇団だと思う。センターの周囲を網羅的に見てきたわけではないが、個人的には最良の果実のように感じる。
本書は、その果実のエッセンスである。
- 作者: 三浦基
- 出版社/メーカー: 五柳書院
- 発売日: 2010/02
- メディア: 単行本
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