ART CRITIQUE

 『ART CRITIQUE』という雑誌が創刊されている。
 京都大学の若手(二十代)研究者を中心に立ち上げられたもののようだ。インタビュー、レビューの記事に加え、本格的な論文も掲載されている。


 第一号の特集は、「ネグり/ハート『<帝国>』の現在」。


 以下、巻頭序文。
「現在到来しているシステムこそ最良であり、それ以外の可能性はもはやない、と「歴史の終わり」が叫ばれてから二十年、経済の成熟・消費市場の多様化とともに、私たちには何を選ぶ自由も許されている。一方で閉塞感は高まり、何を選んでもどうしようもない、という空気が社会を覆う。私たちの自由は、果たして許された選択の自由だけなのだろうか。
 「ただひたすらに進めばいい。」廃墟としての歴史においてシニシズムを抱くのはむしろ自然なことであろうし、そのようなシニシズムを嘲笑することさえ、別種のそれに過ぎない。しかし、実のところ犬儒派(シニシスト)たちはすぐれた生存の美学の実践者であり、単なるシニシズムは、むしろ認識の不徹底でしかないとしたら?垂直に降り注ぐ原子は、どこかで必ず偏倚するのではなかったか。経験には必ずズレが潜み、ズレは実践の可能性を生む。
 「想像してごらん。天国などないんだと。」想像と命令のあわいで、自由というものが本当に存在するとすれば、すでにあるものを表象することではなく、未だないものを想像してしまう力のことだろう。想像力は、私たちの所有する単なる一能力ではない。むしろそれは私たちを貫き、想像の彼方の新しい世界へと連れてゆくのだ。
 連続してゆく流れに、切断をもたらし、未だないものを想像してみせること。そのとき想像の力は、自分自身へと折り返される。問われているのは、私たちの生き方という、アート(技術/芸術)の問題なのである。どこにも存在しえない場所で起こる危機的=批評的な実験によって、私たちは、少しだけ遠くを見てみたいのだ。」


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