昔話

 朝から岐阜・大垣の祖母の家へ行く。


 その後、トンボ返りをして、広島・東城の義理の祖父の家へ行く。東城へは電車では行けないらしく、新大阪の駅からバスで行った。交通の便はあまりよくない。途中、雪が降り始め、除雪車に引かれながら漸く辿り着く。時刻は22時。


 祖父に昔の話を聞く。
 祖父は、戦時中、東京の眼科医の下で書生をしていたが、その時に東京大空襲に遭ったそうだ。新橋から蒲田の麦畑まで逃げたところ、品川に積んであった古い線路の枕木に火がつき、その明かりで新聞が読めたという。アレクサンドリアの大灯台のような話だ。
 夜が明けて祖父が家に戻ると、家財は悉く焼けていた。従前から庭に埋めていた米を掘り返していると、近所の住民たちも戻って来たので、皆でおむすびを食べた。食べた後、人々は三々五々どこかに立ち去り、それ以来、彼らとは会っていない。
 その後、東城に帰った祖父は、土建業を一から始め、苦労をして財を成した。町で初めて近代的な橋を架けた話。数億規模の事業を手がけるもののうまく捗らず、図書館で古い工法を研究した話。笑いながら、大仰な身振りで話す祖父の話は、なかなかに趣深い。



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