日本の庭園

 進士五十八『日本の庭園』読了。


 石と水。そして木。日本庭園はこれらを美しく組み合わせ、その地の自然と歴史と文化を一体として表現した。方寸の中に宇宙を展開しようとしたのである…。


 以前から、都市〜山林のグラデーションを一体的に考えてみたい、という思いがある。里山や庭や、あるいは手を触れることのできない自然。そして、我々の街々。構想の中には、『ナウシカ』と『アキラ』が入っているし、他者論も、写真論も持ち出す用意ができている。しかし“庭”がどうもよく分からなかった。


 本書では、日本庭園の歴史、諸技術を手際よくまとめ、具体的な名園を取り上げて解説する。極めて分かり易い。中でも、造景‐修景‐借景の区分は興味深い。
 曰く、「造景は、相手の自然と無関係に自分の敷地のなかに、独立的に一つのイメージ世界を完結的につくること。」「修景とは、自然にある大木に、たとえば注連縄をめぐらせて特別のものに転化するとか…本体の自然等を改変せずに、人間側に取り込む方法」「借景技法では、相手にはまったく手も触れず、もちろん何の改変もせずに、完全に自分のものとする」云々。
 借景は、内田樹の言うところの、合気道に似ている。心に銘記しよう。
 

日本の庭園 - 造景の技術とこころ (中公新書(1810))

日本の庭園 - 造景の技術とこころ (中公新書(1810))