インシデンタル・アフェアーズ

 サントリーミュージアム「インシデンタル・アフェアーズ」展を観る。


 インシデンタル(incidental)とは、「偶発的な」と「とるに足りない」などの意味を持ちます。
 日常生活の中で私たちを取り巻く物事は、刻一刻と変化しています。その変化や偶発性をうつろいゆく美として捉えることで、普段の何気ない事柄が新たな美意識として甦ります。
 本展では、この「インシデンタル」という言葉をキーワードに、国内外で活躍する現代アーティスト17名の作品を通して、現代の新しい美意識を探り、私たちの日常的な感覚の中に潜む新たな価値観や感覚を呼び起こします。
 とのこと。


 サントリーミュージアムでは初の現代美術展らしい。上質な作品を集めたよい企画だ。一つ一つが印象に残る。とりわけ興味深いのは、アニッシュ・カプーア、田中功起、横井七菜、横溝静。
 カプーアは高名な作家だそうだが、僕は初見。アクリルの立方体の中に気泡が閉じ込められている。空気の泡という、それ自体は不在/不可視のものが、彫刻としてとどめられている。カッコいい。
 田中はいつもどおり。出品作品の中では、最もインシデンタルな感じ。
 横井は本展最年少の作家。繊細な描線や、どことなく不気味で残酷な少女性が特徴的で、マイクロポップネオテニーの文脈に近しい。よく売れるだろうと思う。キュレーター的には、彼女くらいのポジションの作家と付き合うのが一番楽しいのではないか。
 横溝は、見知らぬ他人に手紙を送り、室外から撮影した「Stranger」シリーズを出品。「見ること」と「見られること」の関係性を強く意識させるとともに、それを超えたものを感じさせる。見知らぬ者との共感/交歓/協働。窓辺に佇むStrabgerは、ある者は鋭い眼差しで立ち、ある者は笑顔でおどけて見せる。ロマンチックであり、不穏であり、ハッピーである。


 サントリーミュージアム[天保山] サントリー