この胸に深々と突き刺さる矢を抜け

 過日、白石一文山本周五郎賞を受賞した。
 白石はそのうち直木賞を獲るだろうと思っていたが、なるほど、山本賞の方か。まあいずれにせよ目出度いことだ。


 白石の特質は、言い切りにあるのではないかと思う。文体としてもそうだが、それ以上に、AはBだ、と言い切る姿勢にこそ、彼のピークがあるように思う。話が熱を帯びてくるとある時点で、水が零れ出すように白石は生の声を書き出す。ああ、この人はこれが書きたかったのだな、と思わせる、彼自身の断言。
 それは、とても恥ずかしく、生硬未熟で苛立たしいことだが、しかしだからこそ面白いのだ。