ドン・キホーテの旅
牛島信明『ドン・キホーテの旅』読了。
作品の全体と細部を丹念に読み解きながら、遍歴の騎士の魅力に新たな光を投げかける。従者サンチョ・パンサはもちろん、キリスト、芭蕉、フーテンの寅さんを招き、この、人間の想像力が生み出した最高の果実をより深く味わう。
セルバンテス『ドン・キホーテ』は近代小説の祖とされている。ドストエフスキーによって「これまで天才によって創造されたあらゆる書物の中で最も偉大な、最も憂鬱な書物」であると評されており、また、世界の著名な文学者の投票による「史上最高の文学百選」で一位に選ばれてもいる。その入り組んだメタ・フィクション性だけを取っても奇怪であり、軽重を問わぬ懐の深さは、確かに底知れぬ感がある。
『ドン・キホーテの旅』はそのような事情を要領よくまとめ、また、新たな視点をも提供している。『ドン・キホーテ』への入門書として、誠に最適なもののように思われる。
- 作者: 牛島信明
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2002/11
- メディア: 新書
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