放課後のはらっぱ

 愛知県美術館「放課後のはらっぱ」展を観る。


 美術館のHPから引用。
 「櫃田伸也はすぐれた画家であると同時に、すばらしい先生でもあります。奈良美智杉戸洋など現代アートトップランナーの多くが、実は彼の教え子なのです。そのためこの展覧会では、櫃田自身の名作の数々と、教え子であるアーティストの旧作、近作、新作を織り交ぜてご紹介します。画家・櫃田伸也の魅力に改めて気づくと同時に、多くの作家が彼のもとでどのように才能を開花させていったのかも明らかとなるでしょう。」


 特定のグループ(流派、スクール、運動)を紹介する展覧会というのは多いが、本展は少し趣が異なる。出品作家の間に、何某かの特徴や思想、様式が共有されているわけではない。ただ、同じ先生に触れた、その先生が好きだった、という緩いつながりだけがある。類例を見ないのではないか。


 展示は、全体としてのびのびしたものであるが、締まりがある。小さな紙の切れ端から100号を超えるキャンバスまでが、呼応しつつ、またときに独自に、眼に入る。
 大空間のうちに、グレーとピンクの区切られた空間が設けられ、そこには各作家の大学生の頃の作品が並べられている。壁には手書きのキャプション。作家たちのコメントも実に興味深い。
 全体として眺めても楽しいが、各作家のレアな作品や代表作が目白押しで、いちいち足が止まる。特に、加藤美佳、登山博文、長谷川繁のペイントは、それぞれに凄みがあり思わず息を飲む。櫃田の新作は、キャンバスにペタペタとテープや紙片が留められたもので、どの作品よりもクレイジーである。


 「はらっぱ」展は、愛知でやることに意味がある、という点で、サイトスペシフィックな展覧会でもある。図録には、東京との環境の違いが、作家たちに共通した気分をつくった、という指摘があるが、妥当であろう。


 本展は身内が担当したものである。何を書いても身びいきにしかならぬが、それをおしても言及すべき楽しい展示である。


 展覧会 | 愛知県美術館