相対主義の極北

 入不二基義相対主義の極北』読了。


 すべては相対的で、唯一絶対の真理や正しさはない―この相対主義の論理を相対主義自身にも適用し、極限まで追いかける。その最果ての地で、どのような風景が目撃されるのか?


 中学の頃、同級生に、「でもそれはお前の考えだろう」と言われ、はたと困ったことがある。確かに、それは僕の考えでしかなく、それを彼と共有する道理はない。それは絶対無二の真理ではない…。以来、それは昇華し切れぬ厄介な出来事として、折に触れ、思い出されることになるのだが、本書は、そのような道行きに一つの落とし前をつけてくれる。


 かきかけ


 『相対主義の…』は極めて読み易い。本格的な哲学書だと思うが、論理の曇るようなところは一箇所もない。無駄なもののない、一点もゆるがせにしない、レンガを積み上げるような文章である。これはもう、驚くべきものである。
 油断していたが、思わぬところで古典と呼ぶべき書物に出会った。

相対主義の極北 (ちくま学芸文庫)

相対主義の極北 (ちくま学芸文庫)