イタリア・マフィア

 シルヴィオ・ピエルサンティ『イタリア・マフィア』読了。


 表紙記載の紹介文。
 「ジュゼッペの誘拐殺人事件は、マフィアとはなにかを語る際の最も端的なエピソードになる。冷酷さ、凶暴さ、残忍さ、すべてが含まれている。繊細な神経の持ち主の方は、十分に心の準備をしてから読んでほしい。マフィアの歴史は混乱を極めた血の海であるからだ…。」


 モーツァルトの、『ゴッド・ファーザー』の、ゲーテの、また『ジョジョの奇妙な冒険』の、度重なる薫陶を受け、僕にはイタリアへの愛情が染み付いている。
 実際に、フィレンツェを歩き、ローマの広場に座り、ヴェネツィアの雨に打たれ、その思いはいや増すばかりである。とりわけ、シチリアの乾いた大地への興味は強い。
 イタリアは、その成り立ち故、地域ごとのカラーが随分と異なる。とりわけ、南イタリアシチリアは、ほとんど別の国と言える。そしてシチリアと言えば、何を措いてもマフィアであろう。本書は、イタリア成立〜第二次大戦の経緯に簡単に触れつつ、シチリア・マフィアの歴史を追ってみせる。


 著者はAP通信のイタリア支局長を務めた方。特に八十年代末の“大裁判”(四六四人のマフィアが起訴され、十九人が終身刑)を中心に、時系列で、事実を克明に紹介する。P2(イタリアのフリーメーソン)やCIA、ローマ教皇、さらにはベルルスコーニ首相との関係についても言及するが、マフィアを体系的に深く思考するというよりは、ジャーナリストらしい、生々しい現場の空気を感じさせる文章である。

イタリア・マフィア (ちくま新書)

イタリア・マフィア (ちくま新書)