サザビーズ

 石坂泰章『ザザビーズ』読了。


 オークション世界一、サザビーズ・ジャパン社長が書き下ろすアートで商売をすることの「栄光」と「苦渋」と「恍惚」。感性とビジネスマインドを共存させるには?


 本書では、サザビーズのことももちろん書かれているが、それ以上に、著者の自伝的色彩が濃い。石坂泰三(第一生命、東芝の社長、経団連会長等を歴任)の孫であること、学生の頃のことや、三菱商事勤務時代のことまで、突っ込んで書いている。人の羨む遍歴であろうと思うが、そこにはてらいのなさ、品のよさのようなものも感じる。


 また、本書では、美術品ディーラーとしての経験、サザビーズの組織や仕事の仕方のことが、具体的な細部にまでわたって描かれている。たとえば、サザビーズではファシズム関連のものは扱わないという。競り落とすまで手を上げたままの日本人の話、出品物がすべて落札されたとき、最高の栄誉としてオークショニストに贈られる「ホワイトグラブ」のことなど、一つ一つの情報が極めてビビッドに感じられる。


 サザビーズは、分類するならば、外資系の富裕層ビジネスということになる。アートの世界の話ではあるが、しかし一方で確実にビジネスでもある。サザビーズの超個性的な社員の逸話など、ビジネス書としても秀逸であると思う。面白い。


サザビーズ  「豊かさ」を「幸せ」に変えるアートな仕事術

サザビーズ 「豊かさ」を「幸せ」に変えるアートな仕事術