指定管理者制度

 小林真理指定管理者制度−文化的公共性を支えるのは誰か』読了。


 京都芸術センターでも指定管理者制度を導入している。
 現在の指定管理者は、非公募で選出された、財団法人京都市芸術文化協会。指定の期間は平成十八年度から五年間。平成二十三年度には指定管理者の改選を予定している。


 本書では、前半に学者による理論・解説があり、後半に実務者による報告が記されている。どちらにおいてもそれぞれに見るべきところがあったが、とりわけ川崎市民ミュージアムを巡る経緯は面白く読んだ。


 文化的公共性を支えるのは誰か、という問いには、当然かも知れないが、唯一の解答はない。文化的公共性については、そこで問題にされる「文化」や「公共」の内実により、個別具体的にしか考えられない部分が多い。


 過日、芸術センターでのシンポジウム「京都でつくる」で、会場の一人から、センターはもっと大衆に開かれるべきだ、という指摘がなされた。この種の指摘は、京都芸術センターに限らず多くの文化施設でもなされうると思うが、しばしばそれは難詰の調子を帯びるのではないかと思う。
 パネリストであるアーティストは、まず質問者の名前を問い、「○○さんは、たとえば、どの公演(、作品、事業、プログラム)を観てセンターは閉じられていると感じたのか、御自分の言葉で教えてください」と逆に問うた。そのうえで、自分を含む制作者の力量不足を痛感しているとも述べた。
 僕は、彼女の冷静な反問に感心したのだが、確かに全体の状況を一様に総括する、評論家としての言葉は、ときとして空疎に響く。あなたや私の、具体的な経験のこと。そのような地点からしか文化的公共性は獲得できない、と彼女は述べていたのであろうと思う。


指定管理者制度―文化的公共性を支えるのは誰か

指定管理者制度―文化的公共性を支えるのは誰か