文化による都市再生学

 山崎茂雄『文化による都市再生学』読了。


 創造都市論をベースに、NY、ロンドン、イタリア・ピエモンテ州の事例を参照しつつ、大阪の都市再生を考える、という内容。


 大阪府及び滋賀県での文化関連予算についての紛糾を踏まえて議論を始めており、その点で興味を惹かれた。
 が、残念ながら、結論ありきと言うか、先行研究を別の事例に当てはめただけのものに見える。論理の展開、文章の構成にも、幾つも疑問がある。(ついでに言うと、どうでもいいことだが、誤字脱字が多過ぎる。)


 文化芸術については、世界的に文化権の議論があり、また、経済学において正の外部効果が指摘されている。先の事業仕分けにおいても「文化芸術の発展には誰の異論もない」と明言されている。にも関らず、文化関連予算の縮小という、(創造都市論を擁護する者からすれば)非合理的な判断が生じている。
 次世代の創造都市論を構想する、と銘打つのならば、その非合理性にこそ踏み込まねばならないのではないか。


 この非合理性の根底にあるのは、おそらく、「差異」であろう。ハイアートとポピュラーアート。芸術を理解するごく少数の人々と、理解できない一般大衆。それらの「差異」についての考察を抜きにして、文化芸術の公共性は考えることができないと思う。


文化による都市再生学―創造都市の文化を考える

文化による都市再生学―創造都市の文化を考える