日本画の前衛

 京都国立近代美術館「『日本画の』前衛」展を観る。


 HPから抜粋。“「日本画」の戦前・戦後の世界にあって、これまでほとんど触れられてこなかった「前衛」活動に焦点をあてます。1938年に結成された歴程美術協会を中心に、前衛「洋画」とのかかわり、「バウハウス日本画」といった意外なテーマなど、激動の時代にあって未知の「日本画」表現をさぐろうとした画家たちの果敢な動向を探ります。”


 極めて真っ当な企画展である。
 美術館には、本来、調査研究、収集保存、展示・教育普及、の三つの機能が求められる。本展は、その諸機能を如何なく発揮している。丹念な調査を通じて、作品はもちろん、第一級の資料を集め、きちんと歴史を構成してみせる。
 本展で紹介されるのは、一般に知名度の高い作家ばかりではないと思うが、初見であっても、彼らの消息に寄り添うことができるような気にさせる。


 会場では、各章ごとに長めのテキストが配され、解説がなされている。題材も相まって、“研究”の色合いがかなり強いと思う。しかし、本展は無味乾燥なものでは決してない。
 作品群は、ときに静かに、ときに激しく、鑑賞者に迫る。緊張と詩情のことを、形態と色彩のことを、我々は堪能することができる。暗闇に浮かぶレモンの鮮烈。
 とりわけ、“戦禍の記憶”と題されたパートにおいて、山崎隆の暗いロマンティークを前にするとき、我々は最早言葉を失ってしまうのだ。
 抑えた調子の中から、企画者の仕事への熱意が滲み出る。


 主担当は、京都国立近美・山野学芸課長であろうか。直接は存じ上げないが、今後、その企画には注目するようにしたいと思う。


 『日本画』の前衛 1938–1949 | 京都国立近代美術館