ANTEROOM

 ANTEROOMへ行く。


 Refsignの佐野さん、山崎さんの紹介で、開発を手がけた都市デザインシステムの中西さんにお会いする。


 都市デザインシステムは、元々、コーポラティブハウスを多く手がけていた会社で、東京でホテル・クラスカを立ち上げてから、各地でホテルの開発にも関わっているそうだ。
 最近では、2010年10月、烏丸六条にホテル・カンラ京都をオープンしている。


 ANTEROMの特徴をざっとまとめると、以下のような感じだろうか。


 一、アートがテーマ。
 ANTEROOMでは、名和晃平ディレクションに関わっているそうで、ギャラリーが併設されている。客室には京都の若手作家の作品が飾られており、購入することもできる。
 普通、京都は、伝統と歴史の街として見られており、訪れる者は寺社仏閣を第一の目標にするだろう。伝統はローカルなものでしかあり得ず、だからこそツーリズムの対象になる。
 しかし、同時に、京都は、七つの芸術系大学を含む三十七の大学が所在する、学生の街でもある。当然、ユース・カルチャーも相当豊かなものがある。ANTEROOMは、これまで外からは見えにくかった、京都のコンテンポラリーなカルチャーに注目する。コンテンポラリー・カルチャーは、たとえばNYでもロンドンでも北京でもビートルズが聴かれるように、今やグローバルな共通言語である。KYOTO CONTEMPORARY ARTSは、京都のローカルな伝統に興味のなかった多くの者をも、等しく振り向かせるフックになるかも知れない。


 一、京都駅以南という立地。
 京都に住む方ならよく御承知だろうが、京都は、京都駅の北と南ですっぱりと分かれている。北はいわゆる洛中を含むエリアで、南には観光名所というのはほとんどない。どこの街にもメイン・ステーションの表と裏があるだろうが、京都では、歴史的な経緯もあって、その分離度が著しい。
 ANTEROOMは、その南側に位置する。この地域では、近年いくつかの有力ギャラリーが開設しており、ホテルの開業は、エリアを更新する起爆剤になる可能性がある。


 一、アパートメントが併設。
 ホテル・クラスカにもレジデンスがあったが、ANTEROOMでは、より本格的に、五十室のアパートメントが併設されている。
 ホテルというのは、必ず物語性を帯びるものだ。ホテルにはいつも、いろんなところから多くの人がやって来て、また去って行く。物語というのは、登場人物同士が情報のズレを説明し合うところから生まれるものだが、その点、ホテルは最適な舞台と言える。
 ホテルにアパートを併置するというのは、この物語の発生を加速させる。


 ANTEROOMの開設は、京都市文化政策、あるいは都市政策にとっても、かなり示唆的ではないかと思う。動向を注視したい。


 HOTEL ANTEROOM KYOTO | ホテル アンテルーム 京都