中国近代絵画と日本

 京都国立博物館「中国近代絵画と日本」展へ行く。


 「中国の近現代に活躍した呉昌碩、斉白石、高剣父、徐悲鴻、劉海粟、黄賓虹等の絵画作品を、当館が近年受贈した須磨コレクションを軸に、国内外の名品を集めて展示し、その多彩な展開を追います。
 アヘン戦争に始まる西洋の近代物質文明の衝撃は、旧態依然とした中国の社会全体を揺さぶり、変革を促しました。そうした中で中国が近代化の身近な手本としたのが、隣国の日本でした。
 絵画の近代化という観点から、両国の関係を窺おうというのがこの展覧会の趣旨です。」とのこと。


 地下鉄の中吊り広告(斉白石「宋法山水図」が大きくあしらわれている。)に惹かれて訪れたのだが、大変満足のいく展覧会であった。
 満足ポイントは主に以下の三つ。


 一。中国の近代絵画自体、これまであまり観たことがない。ごっちゃりと文人画のイメージがあって、その後は急に現代美術に飛ぶような把握しかしていない者にとって、大変新鮮であった。
 どれを取っても、まず一枚の絵として楽しませる。方人定「後園図」のペトリとした七面鳥の彩色だけでも見飽きることがない。


 一。本展では、「と日本」というところが重要な点で、近代中国の作家が京都画壇と交流をもったことなどを、作例を引きながら紹介している。
 本展は「日本と中国の絵画をとおした交流は、十九世紀半ばから二十世紀半ばまでの約百年のあいだに、大きな転機を迎え」たと指摘する。中国を頂点としたヒエラルキーが、形を変ずる、生々しさが感じられる。


 一。本展は須磨弥吉郎という大正〜昭和期の外交官のコレクションによる。当時の中国の現代美術を目利きしたということになるのだが、これがもう大当たりである。
 彼はスペイン特命全権公使も務め、長崎県美術館にまとまったスペイン絵画のコレクションを寄贈しているそうだ。これも機会があれば是非見てみたい。そのように思わせるコレクションはなかなかない。


 http://www.kyohaku.go.jp/jp/tokubetsu/120107/index.html


 近年の京都国立博物館の企画は、少なくとも観に行ったものは、一つも外れがない。研究と展示のバランスがよく、初心者も上級者もそれぞれに楽しめるように思う。すごいことだ。
 ミュージアムショップやカフェも整備されたし、来年の秋には、谷口吉生設計の平常展示館が完成する。今後にも大いに期待が高まる。(ちなみにカフェにはからふね屋が入っている。京都発信パフェ・トレンド創作を謳っており、メニューを眺めるだけでも血糖値が上がりそうなお店である。すごいことだ。)