シンガポール・レポート6




[National Museum of Singapore(シンガポール国立博物館)]
住所: 93 Stamford Road, S(178897)
開館時間: 10:00〜19:00
http://nationalmuseum.sg/


1849年に図書館の一部として開設され、1877年に現在の場所に設置された、シンガポールで最も古い博物館。(ちなみに日本で最も古い博物館は東京国立博物館で、1872年(明治5年)の創設。)2006年12月にリニューアル・オープン。
Singapore Art Museum(シンガポール美術館)が現代美術、National Gallery Singaporeが近代美術を扱うのに比べ、同館は、シンガポールの歴史に焦点を当てている。
(と言いつつ、訪問時はシンガポールビエンナーレ2016の作品が数点展示されており、また現代美術を扱う展覧会も開催されていた。)


館内では、常設展示を含む多数のセクションが並行して展開されていて、少し分かりにくい。
独立後最初の10年を扱った「We Built A Nation」展や、人と自然の間の、時に容易でない、微妙な関係を扱った「Desire and Danger」展。
また、Glass Rotundaという展示室には、チームラボによる大規模な映像インスタレーション「Story of the Forest」もある。





地下の展示室では、FRAC所蔵作品による展覧会「What is Not Visible is Not Invisible」が。





マーティン・クリード≪Work No.268, Half the air in a given space(作品番号268 与えられた空間のなかの半分の空気)≫。


他の出品作家は、ピエール・ユイグ、フィリップ・パレーノ、アンリ・サラ、ツェ・スーメイなど、全部で30名弱。






Glass Rotundaの入口。長い螺旋状の通路を回りながら、下階へ降りていく。


シンガポール国立博物館に、何故、日本のチームラボが? という感じもするが、眞田一貫氏のIkkan Art INternationalが2012年頃にチームラボの展覧会を開催し、それがシンガポール美術界の目に留まったという経緯らしい。
http://shitsumon-sg.com/star/star/4849/





日本軍の侵攻により、シンガポール昭南島と改名された歴史も詳細に紹介されている。
山下、パーシバル両司令官会見の際の映像も。





マレーシアからのシンガポールの独立を発表するテレビ中継(1965年8月9日)も、会場内で繰り返し上映。
リー・クアンユーは「私にとって、今は苦渋の時です。生涯、私は二つの領域の合併と統一を信じてきました。」と語り、目頭を熱くしている。


↓45秒くらいから、クアンユーのスピーチ。










「Voices of Singapore」展。
音楽、舞台芸術、テレビや映画を含む文化的な産物を通して、1970年代、80年代に、シンガポール人がどのように「自己表現」を形成してきたかを探る。
シンガポール文化政策に関係する貴重な資料が山積みで、僕のために用意してくれたのかと思う程、楽しい展示であった。関係者は是非とも見ておくべきだと推奨する。


展示解説は、例えばこんな感じ。
「1970年代までに、新しい文化スペースが開発され始め、既存のものも改良された。これらのスペースは、自身特有の“声”を生み出そうとする新興社会の、希望や向上心を象徴するものであった。これらのスペースでは、様々な社会的プログラムとイベントが恒常的に行われた。人々の文化的想像性を豊かにするのに加え、これらの催しは、個人・集団両方の、アイデンティティや所属の表象を明らかにする、オリジナルな作品の創造に刺激を与えもした。実験的な作品も、シンガポール演劇のパイオニアであるKuo Pao Kunによって設立されたインディペンデントなアート・スペース、The Substation(1990)によって進められた。
1985年の、独立後最初の不況も、芸術の経済的なポテンシャルを認める新たな方向性に拍車をかけた。これは、脱植民地後のシンガポール初の公的な芸術政策である、芸術文化諮問委員会のレポート(1989年)に結実した。芸術の現況のレビューに加え、委員会は、1991年の「the Global City for the Arts」プロジェクトを告げ、芸術を振興する物理的なインフラや機関の開発を勧告した。レポートは、そのような機関の設立は、国際的な芸術とアーティストをシンガポールに惹きつけ、文化首都を生み出し、地域経済を加速させるとした。現在のパフォーミング・アーツ・センター、「the Esplanade, Theatres on the Bay」(2002年)もそれらの勧告によって作られた。…」





シンガポール国立博物館の裏手には、フォートカニングパークが広がる。
小高い丘に上ると、緑と高層ビルの向こうに、うっすらと月が見えた。
もうすぐ夜になる。