シンガポール・レポート2

シンガポールには、当然、ビエンナーレ以外にも様々なクリエイティブ・スポットがある。
実際に訪ねられたところを順に紹介する。






[The Substation]
住所: 45 Armenian Street, Singapore 179936
開場時間:
 チケット売場
  月〜金、12:00〜14:00、17:00〜20:00 土・日、週末公演開演1時間前に営業開始 祝日休
 ギャラリー
  毎日12:00〜19:00 祝日休
http://www.substation.org/


1990年設立のインディペンデントなアート・センターで、同種のものとしては、シンガポールで最も歴史がある。
大友良英らのアジアン・ミーティング・フェスティバルのチラシが貼ってあったりして、オルタナティブの巣みたいな感じ。
ブラックボックスの小劇場、ダンススタジオ、ギャラリーや多目的室等から成る。





チケットブース。ちょうど、映像と植物によるインスタレーションが展示されていた。窓から覗き込んで鑑賞する。






例えばギャラリーは、100平米強の広さで、1日当たり170S$(14,000円くらい)で借りられる。
訪れた時は写真のグループ展をやっていた。






小劇場やダンススタジオは閉まっていて見られなかったが、外にいたヤングメンに聞くと、「サブステーション、マジで超いけてるぜ」的なことを話してくれた。
「スペースを持たぬ全ての人たちのために、私たちはこの場所を作った。彼らのアート、歌、物語は今もこの場所とともにある。私たちは芸術のための一つの家だ。云々」とあって、少しブルーハーツ的な気持ちになる。











[OBJECTIFS]
住所: 155 Middle Road, Singapore 188977
開場時間: 火〜土:12:00〜19:00 日:12:00〜16:00 月・祝日休
http://www.objectifs.com.sg/


2003年に設立された、非営利の、写真と映像のためのアート・センター。
黄色い、小さなチャペルが目印。


展示やスクリーニングのほか、制作スキルの教育・ワークショップ、学校へのアウトリーチ、映像作品の配給等に取り組んでいる。
(訪問時、ギャラリーは次の展示をインストール中だった。)


代表的なワークショップとしては、若手写真家のための「Shooting Home」というプログラムが挙げられる。
設立から現在まで毎年実施しているもので、8〜10人の参加者を選定し、「Home」をテーマに作品を制作することでプロフェッショナルなキャリアを探るというものだ。
http://www.objectifs.com.sg/shootinghome2016/






ショップの出入口。








[Zouk]
住所: 3C River Valley Road, The Cannery, Singapore 179022
開場時間: 大体21:00頃から
http://zoukclub.com/


1991年にオープンした、シンガポールにおけるクラブのパイオニア
DJ MAGのTOP 100 Clubs 2016で6位に選ばれている。日本で言うと、WOMBとかageHaに相当するだろう。
(2016年に現在のキークラークへ移転したが、多くのガイドに古いアドレスが載っているので間違えないよう注意!)


Zoukは、アジア最大級の野外フェス「Zouk Out」を2000年から開催。「Best Leisure Event Experience」にも何度か選定されている。






21時オープンで22時頃に入ったが、週末の夜なのに客がほとんどいない…。(ちなみに外国人は入店にパスポートが必要。)
音はすこぶる良い。





24時頃からはフロアは一杯になり、プロのダンサーも登場。





何となく、政府にも庇護された名所なのかなと考えていたが、この日は、26時頃に警察が来てプレイが止められた(!)。
ちょうど帰るところだったので顛末は不明だが、都市の“悪所”であることには違いないようだ。



ちなみに、Zoukは2015年に香港の会社に売却されたようだ。
勇名を馳せてきた以前のそれと、現在のZoukが何か変わっているのかはよく分からない。


シンガポール・レポート1




2017年1月5日(木)〜9日(月)、シンガポールへ、アートを観に行ってきた。



最大の目的は、シンガポールビエンナーレ2016。



シンガポールビエンナーレ2016]
会期:2016年10月27日〜2017年2月26日
会場:シンガポール美術館(Singapore Art Museum)
   SAM at 8Q ※シンガポール美術館の別館
   ほか、シンガポール国立博物館(National Museum of Singapore)など、市内数ヶ所に数点の作品が点在
https://www.singaporebiennale.org/



シンガポール美術館(Singapore Art Museum)]
住所: 71 Bras Basah Road, Singapore 189555
開館時間: 月〜日:10:00〜19:00 ※金は21:00まで開館
https://www.singaporeartmuseum.sg/


シンガポールビエンナーレは、2006年、シンガポール現代アートの国際的なプラットフォームを築くために開始された。
2006年、2008年は、ナショナル・アーツ・カウンシル(NAC)が主催し、南條史生がアーティスティック・ディレクターを務めたが、2011年、2013年、そして今回の2016年は(NACから委託され)シンガポール美術館が主催している。



シンガポールビエンナーレ2016のテーマは「An Atlas of Mirrors」。(日本では「鏡の中のアジア」とか「鏡の地図」などと訳されている。)(Atlasは、ギリシア神話の神で、両腕と頭で天を支えるとされる。地図をアトラスと呼ぶのは、メルカトルが地図帳の表紙にこの神を描いたことに由来する。)
地図は外界を俯瞰的に把握するのに役立つだろう。鏡は自己の外見(や時に内面)を映し出すことができる。シンガポールやアジアの複雑な歴史と現状を示唆しつつ、ビエンナーレの道具立てとしては融通の利く、便利なテーマだろう。
さらにテーマの下に、いわば章立てのように、「An Everywhere of Mirrorings」、「An Endlessness of Beginnings」、「A Presence of Pasts」など、九つのサブ・テーマ(コンセプチュアル・ゾーン)が設定されている。
アジア19ヵ国から63のアーティストが招かれており、作品はほとんどが新作だそうだ。
クリエイティブ・ディレクターは、シンガポール美術館館長のSusie Lingham。




シンガポール美術館正面の外観。
同館は、東南アジア、アジア地域における現代アートに焦点を当てつつ、世界的視野を備えた美術館。1996年1月開館。
元々は、1855年に設立されたセント・ヨセフ学校というラ・サール会系列の男子校だそうで、現在は国定史跡になっている。



シンガポール美術館の状況については、少し古いが、以下のチェ・キョンファ(崔敬華)さんへのインタビューが詳しい。
http://www2a.biglobe.ne.jp/~yamaiku/honhon/biyori/bshimizu1.htm



Hemali Bhutaの≪Growing≫。
線香を連ねて構成されていて、部屋に入る前からかなり強い匂いを感じる。
奥行きがあり、作品の前を左右に移動しながら見ると、色彩の微妙な遷移を見ることができる。
瞑想的なライティングも相俟って、どこか水墨画も連想される。




Titarubiの≪History Repeats Itself≫。
服(というか虚ろの輪郭)を形作る金色の粒は、ナツメグに金を貼ったもの。かつて香辛料が金よりも高価で、ガレー船(囚人や捕虜たち)によって運ばれたこと、支配や植民の歴史に言及していると思う。
よく見ると船が焦げていて、凄惨な争乱も想起させる。
“歴史は繰り返す”というからには、香辛料に象徴される支配や争いの歴史に、現状の世界をなぞらえるという意図もあるのだろう。




Pannaphan Yodmaneeの≪Aftermath≫。

剥がれたコンクリートと鉄骨の瓦礫、石積みのレンガ。



今回のシンガポールビエンナーレでは、“既成概念に捉われず、実験・開拓精神に富むアーティスト1組”に「ベネッセ賞」が贈られることになっており、1月12日に、Pannaphan Yodmanee(パナパン・ヨドマニー)の受賞が発表された。
同賞は、前回(第10回)まで、ヴェネチア・ビエンナーレの参加アーティストに贈られてきたが、今回、初めてアジア圏が舞台となった。
過去の受賞者として、オラファー・エリアソン、ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー、リクリット・ティラヴァーニャらが名を連ねており、受賞者にはベネッセアートサイト直島での作品制作の機会と賞金300万円が授与される。
http://benesse-artsite.jp/contact/press/archive.html



ベネッセのプレスリリースによると、ヨドマニーは「仏教の教えと人々の生活の関連性についての作品を制作。自然に存在する素材と現代のファウンド・オブジェ、タイの伝統的デザインやモチーフを用い喪失、苦しみ、破壊、生と死の輪廻のサイクルなどの普遍的なテーマをとり込んでいる。」のだそうだ。




Qiu Zhijieの≪One has to Wander through All the Outer Worlds to Reach the Innermost Shrine at the End≫。

世界中の神話や、国家、現実の地理上の紛争などをごたまぜにして、1枚の壮大な地図に仕立てた作品。
神話に現れる動物類をガラスで象った像も配置されているが、圧倒的に地図が面白い。
例えば、「幽霊群島」として括られた部分では、「Sandy Island」の名前が見て取れる。オーストラリア沖の南太平洋上にあるとされ、長らく地図にも記載されていた島だが、2012年の現地調査によって存在しないことが分かった(!)。この種の“幻の島”は世界中に存在していて、それらが「幽霊群島」として描かれているのだ。
ほかにも巨人伝説を集めた島や、尖閣諸島など、空想が大いに刺激される。「最後に内奥の社に達するには、人は外界を彷徨せねばならぬ」。



≪One has to Wander through All the Outer Worlds to Reach the Innermost Shrine at the End≫(部分)。
ここに描かれているのは、マカラ(Makara)という怪獣だそうで、南アジア、東南アジアではメジャーなのだそうだ。
調べてみると、元はインド神話に登場する怪魚で、象のような鼻、とぐろ巻く尾を持ち、水を操るとのこと。
(ちなみに、Tan Zi Haoの≪The Skeleton of Makara (The Myth of a Myth)≫も、このマカラをモチーフにしている。)
恐らく同種のものは世界中にいる。日本の鯱(しゃちほこ)も同類のものだと思うが、インド、シンガポールを経由して、日本にも想像の型が伝播したのだろう。




Ni Youyuの≪Atlas≫。




SAM at 8Q正面の外観。
シンガポール美術館の、通り(Queen Street)を1本挟んですぐ裏手に位置する。




SAM at 8Qのエントランス。




竹川宣彰の≪Sugoroku - Anxiety of Falling from History≫。
あいちトリエンナーレ2016にも出品された版画を含むインスタレーション




Ade Darmawanの≪Singapore Human Resources Institute≫。

シンガポールインドネシアのリサイクルショップから集められたもので構成されたインスタレーションシンガポール人材養成機関。
シンガポールという国(の民)の願望と、50年にわたる価値観の変移を感じる。



Adeela Sulemanの≪Dread of Not Night 4≫。




Subodh Guptaの≪Cooking the World≫。
シンガポール国立博物館に展示。




Marine Kyの≪Setting Off≫。
プラナカン博物館に展示。


舞台芸術に係る団体・主催者数

「CoRich舞台芸術!」には舞台芸術関係の団体・主催者が登録されています。

都道府県別、ジャンル別に見ることができるので、試しに集計してみました。



(いずれのジャンルでも東京都が断トツですが、それを除くと)京都府大阪府、福岡県、宮城県等で、舞台芸術に係る団体・主催者が集積していることが分かります。

京都府は、東京都を除く全国の平均値の3.1倍の集積度です。



201602資料(舞台芸術に係る団体・主催者数).xls 直

現代演劇等の主要イベント

現代演劇、コンテンポラリー・ダンスの、国内の主要なイベントをまとめました。
一応2015年11月時点ですが、頭の整理のためのメモですので細部の誤りは御容赦を。


271110資料_現代演劇等のフェスティバル.pdf 直

芸術家の数

 2014年6月に公表された「平成22年度国勢調査」結果に基づき、芸術家の数をまとめてみました。



 261204資料(芸術家の数・平成22年度国勢調査).xls 直



 ※2014年12月に「京都文化芸術コア・ネットワーク」Facebookグループで共有したものと同じ資料です。