美術の星の人へ

 島袋道浩「美術の星の人へ」展を観る。


 サイトの案内文には次のようにある。
 「現在、ベルリンを拠点に活動する島袋は、1990年代初頭よりサイトスペシフィックなプロジェクトやパフォーマンスを中心に、世界中の様々な場所で活動してきました。
 ある場所を訪れ、その土地の人々が忘れていたような逸話や、その場所に特有の可能性をみつけることを出発点に、人々、時に動物をも巻き込んだプロジェクトや作品を制作します。
 今回、出品予定の「シマブクのフィッシュ・アンド・チップス」(2006)、「アートソンジェ山の夜明け」(2007)など、詩的でユーモアあふれる作品は、コミュニケーションの新しい可能性を示唆すると同時に、人間がより豊かに生きていくための新しい価値観を提案します。
 また、海外での発表の機会が圧倒的に多い島袋が、東京という場所、ワタリウムという場所にあわせて新作を制作します。
 「やるつもりのなかったことをやってみる」と題された、あるスポーツに関する作品や、体験型の作品、ビデオ作品、音の作品、写真、言葉など多様なメディアを用いた新作と日本未発表の作品が主に出品されます。この展覧会は人々にとって未来の美術のあり方についての問いを投げかけるとともに、笑顔と新しい体験に満ちたものとなるでしょう。」


 島袋の作品を観るのはこれが初めてだ。
 彼の作品には、僕がアートに求めるものの多くが詰め込まれていた。美しさ、ユーモア、ワクワクする感じ。物事を少しだけ組み替えることで、緩やかに、自由の風が吹いてくる。


 「やるつもりのなかったことをやってみる」では、会場内にゴルフの打ちっ放し施設が設けられ、来場者が実際にショットを体験する。ゴルフのレクチャーを受ける島袋の映像を観た後で、実際にクラブを選ぶ。作家が、やや緊張した面持ちでしたのと同じように、クラブを握り、ボールを置き、その側に立つ。クラブを振る。
 彼の展覧会を観に来るアートピープルの多くは、おそらく一度もゴルフをやったことがないであろうと思う。たとえゴルフに親しんだ人でも、美術館に来て、クラブを振ることになるとは思いもよらないだろう。
 クラブを振る人たちは、皆一様に、少しの笑みを浮かべている。彼らは、一抹の苦味とともに、じんわりとした解放を感じているように見える。


 http://www.shimabuku.net/index.html
 watari-um art museum