アルザス

 一乗寺アルザスへ行く。


 アルザスは、名前のとおりアルザス料理を中心に出す、フレンチ食堂。シェフの道坂さんが一人で給仕もやっている、小さいお店だ。


 アルザスのよいところは(道坂さんの笑顔も含め)無数にあるが、僕は扉が大きく開くところが気に入っている。
 この季節になると、小さな店だけに、野外で食べているような気になる。手を伸ばせば、道行く人と握手ができそうな距離で、鴨を食べ、ワインを飲む。風が入る。夜になると、オレンジの光に惹かれて、羽虫が舞い込んでくる。


 アルザスではいつも、ただのバターやクリームが鮮烈に感じられる。バターとはこのような味だっただろうか!
 今夜の“冷たいヌガー”もまた鮮やか。