ニッポン画物見遊山

 「山本太郎〜ニッポン画物見遊山〜」展を観る。


 山本は京都造形大在学中に「ニッポン画」を提唱し、二〇〇七年にVOCA賞を獲った。気鋭の若手作家の一人と言えるだろう。
 山本曰く、ニッポン画とは次のようなものだ。
 一、現在の日本の状況を端的に表現する絵画
 一、ニッポン独自の笑いである「諧謔」を持った絵画
 一、ニッポンに昔から伝わる絵画技法によって描く絵画
 現代の風俗に材を採り、金屏風に仕立てられた山本の絵は、確かに時に批評的な色彩を帯びる。


 作家のそのような仕草は、しばしば「日本画」について論じる欲望を掻き立てる。その成り立ちに絡みついた幻想や、捏造された伝統のことを、思わずコメントせずにはいられなくなる。
 しかし、彼の絵には、そのように欲望を引き起こすこととは別に、どこか評価のしにくさがあったように思う。端的に言えば、山本の絵は際物めいていた。彼の赤や緑は、「昔から伝わる絵画技法」の前に、うらぶれたペンキの塗りを思わせたのではないか。


 今回の展示でも、そのような感は完全には拭い切れない。しかし、「朝顔図屏風」以降のいくつかの作では、思わず見入るような小気味よさを見せてもいる。そこでは、もう山本は殊更に「ニッポン画」を言わなくてもよいのではないかと思う。完全な情景。絵は、ただ、絵として美しく見える。