抹茶ノ中ノ嵐

 ラム・カツィール「Storm in a teacup」展を観る。


 ラムは、四月から京都芸術センターのレジデント・アーティストとして京都に滞在している。本展は京都で制作した新作による展覧会だ。


 ラム曰く、今回の作品のテーマは「速さと遅さ」というものだ。
 「日本では、お茶会のようなスローネスと、新幹線のような高速性が同居している。それは日本に特に特徴的なもので、そこから僕はインスピレーションを得た。しかし、速さと遅さの対比というのは日本に固有のものというわけではなく、むしろ普遍的なテーマであろう。」と彼は言う。


 作品は、三分強の映像を中心としたインスタレーションだ。
 茶席のシークエンスの中に静かに葉が舞う。静寂。突然、障子の外を電車が行き過ぎる。かと思うと、一転、我々は東海道新幹線の窓外に広がる景色の中に放り込まれる。グリーンの山、田畑、広告と建物。それらは徐々に速度と混迷の度合いを増し、断ち切られるように映像は終わる。


 作品は、ティピカルな事物の扱い方のせいか、僕には深さが測りかねる。たいそう浅くも見えるが、何かを見落としているのかも知れない。
 とは言え、ラムの精緻な手際には感じ入る。スクリーンの傍の樹木の配置、畳、照明、何より映像の品質。それらは十分に見事なものであるし、彼はプロとして確実な仕事を見せたと思う。