Reversible

 ギャラリー16「京都造形大学大学院東島ゼミ / Reversible」展を観る。


 以下HPから抜粋。
 「虹の向こうには何があるのだろう。そんな思いを胸に、期待を持って未来へと進んで行こうとすることはロマンチックだ。しかし未来への歩みの最中、私たちは夢から覚めたように大きな壁にぶち当たることを避けられない。だがむしろ本当の思考は壁を前にして始められる。
 リバーシブル、服を裏っ返すように表裏を反転させてみる。視点の、考え方の表裏を。それが今、壁の裏側へと抜ける有効なやり方ではないだろうか。そんなとき、目は壁ではなく虹を捉えるかもしれない。」


 出展者の桜井君から案内をもらい、出かけた。
 桜井君は、わりとしばしば作風が変わるように思う。もちろんその底流には、彼特有の、独りでのっと立つような趣があるのだが、表面的には随分と変わる。今回は、紙に描いたドローイング様のものであった。曰く、紙を床に置き、その中に立ち、手を伸ばして線、円弧を描いたのだという。前の、色の多い、けれども暗いペインティングに比べると、かなりすっきりしている。少しのゴールドが足され、李禹煥っぽい手触りである。
 支持体の中から描く、というやり方は、アクションペインティングのことを想起させるが、その成り立ち方は、桜井君のものでは随分と異なる。そこには、よろめきにとっかかる、という考えがある。


 展覧会に掲げられたアイデアは、それ程、強いものには見えない。視点の表裏を反転させることで虹に達するという夢想は、着想としては魅力的かも知れないが、それ以上のものを感じさせない。
 「で、どうするんだ?」
 という問いには、作品それ自体が答えるべきであろうが、折悪しく体調すぐれぬ僕には、明快なソリューションを見出すことができなかった。