料理

 育児休業、十五日目。
 麻婆豆腐を作る。


 育児休業中は、毎日、家事をすることになる。その中で最も楽しみなのは料理をすることだ。今の僕にとって、料理は、クリエイティビティー発現のための重要な場である。


 料理のよいところの一つは、結果が即座に、また正直に出るということである。
 丁寧に作れば、それに正確に比例してクオリティーが上がる。作ったものをすぐに食べて良し悪しを判断できる。意識的に訓練すれば、スキルアップもきちんと見て取れる。何度か同じものを作ると、ある時点でブレイクスルーを迎え、味が劇的に変わる。基礎を押さえれば、応用が利く。
 これは、ある意味で数学的なことである。


 ある種の仕事ではこうはいかない。入力と出力の関係が極めて複雑怪奇なことや、何年もかけて取り組んでも芽が出ないようなことはざらにある。
 料理はもっとシンプルである。


 これまで僕の料理スキルのベースはイタリアンであった。にんにく、オリーブオイルとトマトが僕の知っている単語であり、キャンバスに塗る下地であった。
 今日はそこに生姜と葱が加わった。中華の基礎は、にんにくと生姜と葱。必要とあらば具象化できる程の、明確なステップを感じる。