みえないちから

 ICC「みえないちから」展を観る。


 白眉は、フォルマント兄弟(三輪眞弘+佐近田展康)の「お化け屋敷」。


 展覧会のテーマ「みえないちから」を「メディアに宿る亡霊」という観点から考察した作品。19世紀後半から次々に誕生したメディア技術が、どのよう我々の自明な世界に介入し、混乱させるのか。また、その体験が伝統的に亡霊や幽霊と呼ばれてきたものの体験といかにパラレルな関係にあるかが、写真、録音、電話といった日常的なメディア技術を例に、「お化け屋敷」という語りの形式を借りて分かりやすく提示される。
 亡きロックスター(フレディ・マーキュリー)に日本語で革命歌「インターナショナル」を歌わせる《フレディの墓/インターナショナル》を発展させた作品。


 我々は、しばしば携帯電話で話す人を見かける。最早それは日常風景の一つだ。が、遠く離れた、眼に見えぬ者に向かって語りかけ、歩き回りながら、時には笑ったり、お辞儀をしたり、泣いたりしている人のことを改めてよく観察してみると、それはほとんど「憑き物」のように見えるのではないだろうか。このようにして我々に取り憑くもののことを“機械”と呼ぼう。というのが、フォルマント兄弟の着想。


 我々は、“機械”から逃れることは最早不可能であろう。彼らは、いつも写真に写りこみ、録音に紛れ込み、あるいは携帯電話の向こうからやってくる。“機械”は我々の世界に遍在している。


 ICC ONLINE | アーカイヴ | 2010年 | みえないちから