大衆音楽史

 森正人『大衆音楽史』読了。


 日本にも多大な影響を与えてきた欧米のポピュラー・ミュージック。さまざまな場所で作曲・演奏され、受け入れられてきたその全ての事象を網羅することは困難だが、大きな流れというものは存在する。本書は、人間の移動と文化接触アメリカとヨーロッパにどんな音楽的変化をもたらしたかという視点から、ジャズ、ブルース、ロック、レゲエ、パンク、ヒップ・ホップを中心に音楽史を編もうという試みである。


 文化地理学という理論的フレームの中で、大衆音楽の歴史をコンパクトにまとめてみせる。著者自身、音楽は専門ではない、と断るとおり、そのコンパクトさも相俟って、学位論文をつなぎ合わせたたような感もある。
 一つ一つをみれば間違いが目につくし、驚くような知見も示されていない。多分、各章(ジャンル)ごとには、もっと詳しい方がゴマンとおられる。とは言え、世界をなるべく複雑に理解しようとする姿勢は好ましいし、その上で、理論的枠組みを構築しようという努力も評価されてよいと思う。