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剣の精神誌

甲野善紀『剣の精神誌』読了。 異端の天才剣客真里谷円四郎義旭。江戸時代中期、一千回を超える他流試合に一度も敗れなかったという桁外れの強さを発揮し、門弟は大名から平士まで一万人以上に及んだ。その剣の流儀は無住心剣術。日本剣術史の上で最高峰の流…

私小説

水野美苗『私小説』読了。 「美苗」は12歳で渡米し滞在20年目を迎えた大学院生。アメリカに溶け込めず、漱石や一葉など日本近代文学を読み耽りつつ育ったが、現代の日本にも違和感を覚え帰国をためらい続けてきた。雪のある日、ニューヨークの片隅で生きる彫…

ヒップホップはアメリカを変えたか?

S・クレイグ・ワトキンス『ヒップホップはアメリカを変えたか?』読了。 ヒップホップのパワーとは?その未来とは?病める現代アメリカの社会・政治・経済を刺激してきたヒップホップ・カルチャー。その誕生から絶頂、そして明らかになる様々な問題を突き、…

文化社会学入門

井上俊/長谷正人編著『文化社会学入門』読了。 文化社会学の教科書/入門書。 文化社会学の、トピック、視点、方法、概念等について、それぞれ数ページで要領よくまとめられている。 京都芸術センターの富永館長が、「芸術という文化」について書いておられ…

おもしろければOKか?

三浦基『おもしろければOKか?−現代演劇考』読了。 「演劇の衰退を再生、更新するための作戦、まるごと大公開。」とのこと。 著者自身の実際の演出をもとに、演劇を取り巻く諸要素(台詞、発語、俳優、役、言葉、身体…)について検討する。 著者は、演出家…

ミイラにダンスを踊らせて

トマス・ホーヴィング『ミイラにダンスを踊らせて』読了。 1967年、第七代館長に就任するや、「メットの経営もGMの経営も同じだ」と喝破し、寄付寄贈の取り付け、名品の購入、魅力的な展覧会の連発、キュレーターの新人事と過激な改革の道を走り続けた名物館…

トクヴィル

富永茂樹『トクヴィル−現代へのまなざし』読了。 『アメリカのデモクラシー』、『アンシァン・レジームとフランス革命』で知られるフランスの思想家トクヴィル。デモクラシーのもとで生じる政治と社会の本質的な変容を深く観察した彼は、人間の未来をどう考…

ストリートの思想

毛利嘉孝『ストリートの思想』読了。 1990年代に何が起きたのか?思想は今や、大学からストリートへ飛び出した!ホームレスや外国人労働者の新しい支援運動がスタートした90年代。イラク戦争反対デモからフリーターの闘争までの、様々な運動が活発になったゼ…

公共経営と政策研究

村上弘ほか編『京都市政 公共経営と政策研究』読了。 大都市自治体とその政策・経営に注目し、それを京都市という特色ある地域において、1980年代から2005年頃までの四半世紀を対象に、財政学、経済学、経営学、社会学、政治学、行政学などの研究者や実務家…

山水思想

松岡正剛『山水思想』読了。 日本の水墨画は中国から渡来後、いつ独自の画風を備えたか。我々は画のどこに日本的なものを見出すか。そもそも日本画とは何か。著者の叔父は日本画家、横山操と親交があった。その縁を契機に著者は中世から現代までの日本画の道…

クリエイティブ都市論

リチャード・フロリダ『クリエイティブ都市論』読了。 「クリエイティブ・クラス」という新たな経済の支配階級の動向から、グローバル経済における地域間競争の変質を読み取り、世界中から注目を浴びた都市経済学者リチャード・フロリダ。2008年に発表された…

金と芸術

ハンス・アビング『金と芸術−なぜアーティストは貧乏なのか?』読了。 著者はアムステルダム大学で経済学の教鞭を執る異色のアーティスト。経済という観点から芸術界を支える構造を明らかにしつつ、エンターテイメント業界やスポーツ業界など、関連する事例…

グローバル化する文化政策

佐々木雅行ほか編著『グローバル化する文化政策』読了。 総論では文化帝国主義、ヨーロッパ都市政策の変化、9・11以後の文化政策など近年の文化政策の流れを俯瞰・整理する。各論ではグローバリゼーションの文脈で、文化政策の持つ問題点を指摘し、文化産業…

コルタサル短編集

『コルタサル短編集』読了。 夕暮れの公園で何気なく撮った一枚の写真から、現実と非現実の交錯する不可思議な世界が生まれる「悪魔の涎」。薬物への耽溺とジャズの即興演奏のなかに彼岸を垣間見るサックス奏者を描いた「追い求める男」。斬新な実験性と幻想…

文化による都市再生学

山崎茂雄『文化による都市再生学』読了。 創造都市論をベースに、NY、ロンドン、イタリア・ピエモンテ州の事例を参照しつつ、大阪の都市再生を考える、という内容。 大阪府及び滋賀県での文化関連予算についての紛糾を踏まえて議論を始めており、その点で…

アーツ・マネジメント概論

小林真理・片山泰輔ほか『アーツ・マネジメント概論 三訂版』読了。 アートを最大限に活かすマネジメントとは何か。文化施設の企画・運営に携わるすべての人必携テキストの三訂版。 アーツ・マネジメントの教科書。指定管理者制度の導入、公益法人改革等の近…

現代アートビジネス

小山登美夫『現代アートビジネス』読了。 アンディ・ウォーホルの作品に八十億円もの高値が付くのはなぜか?世界の富が現代アートに集まる今、「作品の価値」に基づいた健全なマーケットこそが、芸術文化の底力となる―。種も仕掛けもあるアートビジネスの世…

共通感覚論

中村雄二郎『共通感覚論』読了。 〈常識〉を意味するコモン・センスという言葉は、アリストテレス以来、五感を統合する根源的能力の〈共通感覚〉を意味していた。この二つはどのように結びつき、関係するのだろうか。古今の知見を縦横に駆使し、人間や芸術に…

新宗教と巨大建築

五十嵐太郎『新編 新宗教と巨大建築』読了。 天理教、金光教、大本教など19世紀に立教した新興宗教から、真光教、パーフェクト・リバティ教団などの戦後の新宗教にいたるまで。なぜ近代以降の宗教建築は、いかがわしく不気味なものと見なされてきたのか。そ…

アメリカまで

遠藤水城『アメリカまで』読了。 キュレーター・遠藤水城によるインタビュー集。 アメリカ渡航を控える二〇〇七年初頭、それまで放置してきたアメリカと対峙すべく、長谷川祐子、田中功起ら六人に行ったインタビューを収録。 収録されているものの中では、長…

独酌余滴

多田富雄『独酌余滴』読了。 インドの弱法師、茸好き、愛犬イプシロンとの日々−能をこよなく愛す世界的免疫学者が、日本・世界各地を旅し、目にした人間の生の営み、自然の美、芸術、故白洲正子との交友などを、深遠かつ端正な文章で描く。2000年度日本エッ…

異形の王権

網野善彦『異形の王権』読了。 婆娑羅の風を巻き起こしつつ、聖と賤のはざまに跳梁する「異類異形」、社会と人間の奥底にひそむ力をも最大限に動員しようとする後醍醐の王朝、南北朝期=大転換のさなかに噴出する<異形>の意味と力を探る。 面白いのが読む…

千夜千冊

松岡正剛『千夜千冊 壱』読了。 求龍堂:松岡正剛 千夜千冊

匣の中の失楽

竹本健治『匣の中の失楽』読了。 『黒死館殺人事件』、『ドグラ・マグラ』、『虚無への供物』と並ぶ、いわゆるミステリ四大奇書の一。 筋書きは省略。 これは解決された…のか?リドル・ストーリーなんじゃないか?という程度によく分かりませんでした。。む…

大衆音楽史

森正人『大衆音楽史』読了。 日本にも多大な影響を与えてきた欧米のポピュラー・ミュージック。さまざまな場所で作曲・演奏され、受け入れられてきたその全ての事象を網羅することは困難だが、大きな流れというものは存在する。本書は、人間の移動と文化接触…

まちづくりの新しい理論

C・アレグザンダー他『まちづくりの新しい理論』読了。 C・アレグザンダーの提唱するまちづくりの理論、パタン・ランゲージを、簡単にまとめ、また、シュミレーションの様子をレポートしたもの。初めて彼について学ぶ方や、まちづくりに興味のある一般の人…

インドへ

横尾忠則『インドへ』読了。 ビートルズに触発され、三島由紀夫に決定づけられて訪れたインド同時代のカルマ<業>を背に、芸術家の過敏な感性をコンパスとして宇宙と自己、自然と芸術を考える異色旅行記。 ビレッジバンガードの書棚を見ているような気分。…

タタド

小池昌代『タタド』読了。 波の音を聞くと、遠い土地に流れ着いた流木のような気分になる−。海辺のセカンドハウスに集まった地方テレビのプロデューサー夫婦と友人二人。五十代の男女四人は浜辺に落ちた海藻を拾い、庭に実る猿の頭ほどの夏みかんを頬ばり、…

指定管理者制度

小林真理『指定管理者制度−文化的公共性を支えるのは誰か』読了。 京都芸術センターでも指定管理者制度を導入している。 現在の指定管理者は、非公募で選出された、財団法人京都市芸術文化協会。指定の期間は平成十八年度から五年間。平成二十三年度には指定…

サザビーズ

石坂泰章『ザザビーズ』読了。 オークション世界一、サザビーズ・ジャパン社長が書き下ろすアートで商売をすることの「栄光」と「苦渋」と「恍惚」。感性とビジネスマインドを共存させるには? 本書では、サザビーズのことももちろん書かれているが、それ以…